アンプにおける差動回路は、低ひずみ、広帯域のオーディオ信号増幅を可能にする回路設計であり、今日のトランジスター・パワーアンプ、そのす べてに採用されているといっても過言ではありません。オーディアはこのメリットを踏まえつつ、Flight 50にトランジェント特性のより一層の向上をめざした独自の技術を盛り込んでいます。
電流帰還により差動回路を構成するカレントフィードバック回路がそれで、一般的な電圧帰還による差動回路では、周波数特性を広げると、それに 反して過渡応答特性が劣化してしまいます。これは矩形波信号の入出力を観察したときにも明らかに認められるもので、オーディオ信号に不必要な カラーレーションをもたらす結果となっています。
カレントフィードバック回路では、抵抗を介さず、電流として入力段にリニアに信号を帰還させるため、低ひずみ、広帯域を維持しながらトラン ジェント特性を飛躍的に向上させることができます。これにより、FLIGHT 50は1MHzを超える広帯域と250V/μsのハイスルーレートを実現。 また、帰還ループを出力段の前で閉じる回路構成としたことで、スピーカーのインピーダンス変動にも左右されないきわめて安定した出力を可能にしています。
出力段は、オーディオ用に設計されたハイグレード出力素子、東芝製のIGBT(インシュレーテッド・ゲート・バイポーラ・トランジスター)を 片chにつき8個使用した4パラレルプッシュプル構成。クロスオーバーひずみとは無縁の純A級動作とし、8Ω負荷・50W/ch、4 Ω負荷・100W/ch、2Ω負荷・200W/chの出力を実現しています。
電源トランスには、450VAの大容量トロイダルトランスをそれぞれ左右独立で搭載。
コイル巻線のテンションを最適化するとともに、トランスコア・プレートには高圧樹脂充填を施しています。また、電源回路は入力/ドライバー段 用と出力段用とに分け、入力/ドライバー段用にはハイスピード応答の電解コンデンサーを8個(トータル26,400μF)、出力段用には 22,000μFの低ESR電解コンデンサーを4個投入しています。
アンプ内部は、ステレオセパレーションを良好に保つとともに、ウェイトバランスにも優れた左右シンメトリー、デュアルモノ・コンストラクショ ン。シャーシには、レーザーマシン加工による高品位アルミシャーシを採用。 ヒートシンクには10,000cuの放熱面積を持たせ、発熱量の多い純A級アンプながらファンを使わない自然空冷としています。
入力は、RCAアンバランスとXLRバランスの2系統を装備し、リアパネルから入力の切り替えが可能。さらに、RCAアンバランス入力では、 ディップスイッチにより4段階のインピーダンス切り替えもできるようになっています。また、RCAアンバランス/XLRバランスの入力切り替 えには不活性ガスを封入した金メッキ接点のリレーを、スピーカー出力には定評あるWBT製バインディングポストタイプを
採用しています。
Flight 50の主な仕様


定格出力 |
50W+50W(8Ω負荷・両チャンネル駆動時)
100W+100W(4Ω負荷・両チャンネル駆動時)
200W+200W(2Ω負荷・両チャンネル駆動時) |
ゲイン |
26dB |
入力感度 |
1Vrms |
スルーレート |
250V/μs以上 |
全高調波ひずみ率 |
0.05%以下 |
周波数特性 |
3Hz〜1MHz−3dB(1Wrms出力時) |
S/N比 |
110dB |
入力インピーダンス |
24/28/42/57kΩ(切り替え、シングルエンド)、23kΩ(バランス) |
消費電力 |
250W(アイドリング時)、900W(最大) |
大きさ |
470(W)×186(H)×440(D)mm |
重量 |
30kg |
希望小売価格 |
980,000円(税別) |
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